若者たちはいかに 「蟹工船」 を読んだか
という記事が掲載された。

残念ながら、Web版には掲載されていないので詳しくは紹介できないが、
主な部分をキーボード入力で紹介したい。
このほど【『蟹工船』読書エッセーコンテスト】が行われ、
25歳以下対象の【U25】部門と、
年齢制限なしの【ネットカフェ部門】の二つの部門で募集し、
百件を上回る応募があったとのこと。
全体として力作ぞろいの応募作の中で、U25部門、ネットカフェ部門ともに、それぞれの最高賞を受賞したのは、女性の労働者の手によるものだった。
どちらも虚無感に満ちた現実世界野中で労働し、生活する人たちの悲しみと絶望、出口のない閉塞感といった深刻な問題を直視し現実の労働現場の状況と「蟹工船」の世界を対照させながら、言いたいこと、語りたいことをぐいぐいと主張してくる、訴える力の強い作品である。
切実な内容と文体でこうした感想を筆者達に書かせたということそのものが、やはり社会的なしわ寄せを受けやすくなっている女性労働者たちの現実状況を反映しているのだろう。
若い女性の感性もさることながら、彼女らが「蟹工船」を読んでみようとしたきっかけの方により興味を引かれる。
おそらく、感想文を読めば、そのあたりの経緯が解るのだろうと思う。
U25部門で準大賞をを分け合った二つの作品は、それぞれ中学生、高校生の手による、みずみずしい感性を示す感想である。
・・・その切り口も書かれている文章の文体も、実に心打たれるものだった。
高校生の受賞作に、日本の現状を振り返りながら、「本来なら他の国の人達にも誇るべき日本人の温厚さが近年の色々な問題を引き起こしてきた一つの要因になっているとしたら、とても嘆かわしい事である」と述べてあるところなど、そのしっかりした思考に敬服させられた。
私たちが高校生の頃は、日本史か現代国語かなにかで、一般論として「蟹工船」やナップについてさらっと習った気がするが、本文が教科書に掲載されてはいなかったと思う。
教科書検定の右傾化のもとで、「蟹工船」が教科書に掲載されているとは思えないので、中高生がどのようにして「蟹工船」との接点を持ったのかにも興味がある。
二つの部門を通じて、論点として特徴的だったのは、「蟹工船」の世界は昔のことではなく、今起こっていることであるとする点、そうした中で「団結」の意味を認識したという点だった。
それもただ単に虐げられた労働者の「団結」の必要性をいうだけでなく、さらに突っ込んで、現状の中での「団結」の困難さと、それを打開する意志を表明したものが目立ったことは、「蟹工船」が今日の時代野中で、現実に生きている若者たち、労働者たちの間に、どのような具体性をもって読まれていかを端的に示したものだといえるだろう。
この団結の困難性とこれを打開する努力と意志という問題は、現在の労働運動の重大な課題だと切実に感じているので、是非この受賞作を読んでみたい。
私も、職場の若手に労働組合の話をしてみたが、
「考え方や生活が多様化している中で、要求も様々であり要求をまとめることは不可能だ」
との話となり、これに対して説得力ある応答ができなかったことがある。
一般的な労働運動論は勉強しているだけでは若者の意識に感銘を与えられないことを痛感したものであった。
今年は多喜二生誕百五年、没後七十五周年にあたり、各地での「多喜二祭」も盛り上がりをみせている。
まさに多喜二の描いたものが、時代を超えて、今日の資本主義社会の実相を浮き彫りにしているからではないかとの思いを、一層深くする結果であった。
<コンテスト審査員・選考委員長 島村 輝 女子美術大学教授>
Web版でも掲載されているので、もう一度「蟹工船」本文を読んでみたいと思う。
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【選考会詳細】 は、続きを御覧ください。
【他にもWeb版で読める多喜二作品】
「一九二八年三月一五日」
「不在地主」
「工場細胞」
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【選考会詳細】
多喜二ライブラリーより転載
選考委員として、
荻野 富士夫氏 (小樽商科大学教授)
ノーマ・フィールド氏 (米国・シカゴ大学教授)
香山 リカ氏 (帝塚山学院大学教授)
由里 幸子氏 (朝日新聞社前編集委員)
島村 輝氏 (女子美術大学大学院教授)
に出席をいただきました。
事務局の白樺文学館からは、佐野力館長、渡辺貞夫副館長、松浦英雄、森純明、佐藤三郎が参加しました。
選考会は、互選で島村輝氏を選考委員会委員長に選び、事前に採点いただいた審査・選考採点をもとに協議し、選考しました。
予定時間を超える充実した議論の後、Up to 25部門大賞に、山口さなえ(東京・中野)、準大賞・白樺文学館館長賞に小嶋森人(北海道・小樽)と神田ユウ(北海道・室蘭)の2点、ネットカフェからの応募部門準大賞・館長賞に狗又ユミカ(埼玉・蕨)を選考しました
選考委員特別奨励賞は、各審査委員の単独選考で各1篇、計5篇を選考しました。
また、奨励賞にはUp to 25部門では中国から応募の2篇を含む計6篇を選び、ネットカフェからの応募部門2篇とあわせて、計8篇を選考しました。
なお、準大賞は当初、賞金30万円(1名)という設定でしたが、採点の結果同数の得点であり、作品内容としても甲乙つけ難いことから2名受賞とし、副賞賞金は奨励賞の枠から1名分10万円を繰り上げ合算した40万円を2人で20万円ずつ授与することになりました。未成年である2人への授賞ということで、副賞は保護者の方々の後見を得、奨学金として授与することになったことをお断りします。
奨励賞となったH・T(東京)さんの応募は、連絡先すら記されていないことから、本人からの連絡をまって授与することで選考委員会の結論を得ました。H・Tさん、至急、白樺文学館へご連絡ください。
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入賞者は以下の通り。
●Up to 25部門=14篇
<大賞・小樽商科大学学長賞> 山口さなえ (東京・中野)
<準大賞・白樺文学館館長賞> 小嶋森人 (北海道小樽・中学)
<準大賞・白樺文学館館長賞> 神田ユウ (北海道室蘭東翔高)
<荻野富士夫・特別奨励賞> 竹中聡宏 (小樽商科大学)
<香山リカ・特別奨励賞> 佐藤美幸 (津田塾大学)
<島村 輝・特別奨励賞> 長田典之 (都留文科大学)
<ノーマ・フィールド特別奨励賞> 佐藤亜美 (小樽商科大学)
<由里幸子・特別奨励賞> 吉元一真 (法政大学)
<奨励賞> 陳 君 (中国・河北大学)
<奨励賞> 笹井良太 (滋賀大学)
<奨励賞> 志賀一也 (東京・中野)
<奨励賞> 秋田尚文 (大阪大学)
<奨励賞> 濱田大輔 (島根大学)
<奨励賞> 南 楠 (中国・北京外語大学)
●ネットカフェからの応募部門=3篇
<準大賞・館長賞> 狗又ユミカ (埼玉・蕨)
<奨励賞> 神村和美 (東京・小平)
<奨励賞> H・T (東京)
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入選者は以下の通り。
●Up to 25部門=15篇
屋敷尚紀 (鹿児島・中学)
柳沢日香莉 (駒込高校)
近間智之 (北海道岩見沢西高校)
鈴木貴裕 (秋田工業専門学校)
吉武 渉 (広島大学)
森野泰斗 (同志社大学)
佐藤ちぐさ (千葉大学)
井口 香 (小樽商科大学)
徐 天嬌 (中国・伝媒大学)
長谷川友美 (東京大学)
海老名諒 (埼玉大学)
渡邊幸代 (名古屋大学大学院)
日向隆実 (東京)
肖 静 (中国・河北大学院)
魏 雯 (中国・北京外国語大学)
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●ネットカフェからの応募部門=1篇
清水 淳 (千葉・我孫子)
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なお、本エッセーコンテストは、
●主催=小樽商科大学/白樺文学館多喜二ライブラリー
●後援=朝日新聞社/北海道放送(HBC)/秋田県立図書館/東銀座出版社/全国大学生協連合北海道地域センター/マッシュアップ
で実施したものです。
ご協力をいただいた関係各位に、篤く感謝申し上げます。
※受賞者名は、本人の希望により、ペンネームの方も含まれています。
(応募状況報告)
「コンテスト」への応募総件数は、117件。
内訳は、
◇Up to 25部門
海外からの応募 24篇(中国:北京外語大学8篇、河北大学5篇、東北師範大学3篇、精華大学2篇、北京大学2篇、浙江大学、伝媒大学、アメリカ・アイオア大学、フランス)。
国内は、中学 3校3篇、高校 8校8篇、大学など約40校(秋田工業専門学校13篇、小樽商科大学7篇他)。
◇ネットカフェからの応募部門9篇。
以上
[2008/1/25]