兼松に賠償命令
東京高裁逆転判決
2008年2月1日(金)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-02-01/2008020101_02_0.html
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「コース別人事」によって女性であることを理由に賃金差別を受けたとして、総合商社の兼松(三輪徳泰社長、本社・東京都港区)の女性社員ら六人が同社を相手に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が三十一日、東京高裁でありました。
西田美昭裁判長は、女性社員は男性と同等の困難な職務を行っていたことなどをあげて、「男性と大きな賃金格差があったことに合理的理由はなく、性の違いによって差別した」と指摘。男女の同一賃金を定めた労基法四条に反するとのべ、訴えを退けた一審の東京地裁判決を変更し、四人に計七千二百五十万円を支払うよう命じました。二人については、勤続年数や専門性などを理由に違法と認めませんでした。
六人は一九五七年―八二年に入社。同社は男女別の賃金制度をとっていましたが、男女雇用機会均等法を受けて八五年に「コース別人事」を導入した後も、男性を「一般職」、女性を「事務職」とする差別的な賃金制度を続けていると労働者側は主張していました。
報告集会で原告弁護団の中野麻美弁護士は「男女が同じ仕事・働き方をしていれば、契約形態の違いによる賃金格差は違法だと認められた。パートなど契約形態が違う職種にも大きな影響を与える」とのべました。
原告の一人、木村敦子さん(50)は「コース別人事が男女差別であると認められてよかった」と語りました。
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兼松「コース別人事」高裁判決
男女賃金差別 初の認定
契約形態理由の格差にも影響
しんぶん「赤旗」 2008年2月2日付け
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-02-02/2008020205_01_0.html
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解説
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「コース別人事」雇用における男女間の賃金格差は女性差別である―東京高裁が一月三十一日、総合商社兼松の女性への賃金差別の是正を求めた控訴審で、六人の原告のうち四人の訴えを認める判決を出しました。
判決は、女性社員が男性と同じ内容で困難な職務をしていたことをあげ、「男性と大きな賃金格差があったことに合理的な理由はなく、性の違いによって差別した」とのべ、「男女同一賃金を定めた労働基準法四条に反する」とその違法性を認めました。
二〇〇三年十一月、東京地裁で出された「男女間の賃金格差は配置等の差別の結果生じたもので、男女賃金差別ではない」との判断をくつがえすものです。
男女雇用機会均等法を受け一九八五年、同社は「コース別人事」を導入。男性は全国転勤と幹部昇進のある「一般職」、女性は勤務地限定で昇進なしの「事務職」のコース別(職掌別)賃金体系に一律に移行しました。判決は、このコース別人事制度が、同社の旧来の男女別年功序列賃金体系を「そのまま引き継いだ」ものだと指摘しました。女性の賃金は、管理職になる前の男性の二分の一にも満たないものでした。
会社側が、“一般職への転換制度があるから差別ではない”とした点についても、判決は、「転換の要件がきびしく、転換後も格付けも低い」として、形だけ変えて差別を温存するやり方は許されないことを示しました。
「コース別人事」は、男女の賃金格差を隠ぺいする手段として日本の多くの企業で導入されました。野村証券や岡谷鋼機でも「コース別人事」を理由とした男女間差別を問う訴訟が起きました。これらの訴訟の判断では、募集、配置や昇進などでの性による差別を禁止した改正雇用機会均等法第六条に反するとされました。
今回のように、男女間賃金の格差を認めてその部分の支払いを命じた判決は今回が初めてです。
同じ仕事をしていれば契約形態の違いを理由にした賃金格差は認められないとした点でも、性の違いだけでなく契約形態の違う労働者間の格差を判定する上で影響をあたえるものです。
国連女性差別撤廃委員会やILO(国際労働機関)は、日本企業のコース別人事処遇は男女差別の隠れみのであると批判してきました。均等法も〇六年の改定で、部分的ですが、「間接差別の禁止」を盛りこみました。
原告たちは報告集会で、「同じ苦しみを味わって働いている人たちが、少しでもいい環境で働いていくための第一歩になれば」と語りました。この思いにこたえる政府の施策や法整備が求められています。(川田博子)