この「日本版NSC」。
結局アメリカが行なう軍事行動に、日本政府が機敏に対応できるよう情報の『一元化』を目指すものであろう。
政府は、軍事・外交面で 官邸機能を強化する という言い分であるが、実質的には外交交渉軽視、軍事対応優先にならざるを得ない。
新たな「大本営」を作る行為である。
これが、【関係者が情報を漏えいした場合の罰則などを盛り込んだ秘密保護法制も次期通常国会までに提出する計画】というように、「秘密保護法」や「共謀法」、「国民保護法」先日可決した「門番法」など、国民監視の法体系と一体の物であり、安倍政権が目指す「憲法改定」の露払いをするものであることは明らかである。
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2007年4月7日(土)「しんぶん赤旗」
日本版NSC法案決定
軍事・外交 官邸機能を強化
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政府は六日、外交・軍事政策での官邸機能を強化するため、「国家安全保障会議」(日本版NSC)創設のための関連法案を閣議決定しました。政府・与党は来年四月の発足に向け、今国会での成立を狙っています。
「日本版NSC」は、米国の国家安全保障会議(NSC)をモデルにしたもの。一九八六年に設置された安全保障会議の約二十年ぶりの改組となります。
法案では、首相・官房長官・外務・防衛相による「機動的・実質的な審議システム」(内閣官房)を創設するとし、国家安全保障担当の首相補佐官の設置の規定を設けました。外交・軍事政策や国防の基本方針など「国家安全保障」に関する「幅広い事項」を審議するとしています。一方、九人の首相・閣僚で構成される安全保障会議の枠組みも維持し、「防衛計画の大綱」などは従来どおり、この枠組みの中で審議します。
また、関係省庁に対する資料や情報の請求権も盛り込んでいます。情報管理に実効性を持たせるため、関係者が情報を漏えいした場合の罰則などを盛り込んだ秘密保護法制も次期通常国会までに提出する計画です。

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解説
情報統制 強化の危険
「国家安全保障会議」(日本版NSC)は、大統領が外交・軍事政策の決定で強大な権限を持つ米国をモデルにした、日本型「戦争国家」の司令塔といえます。
安倍晋三首相は昨年九月の所信表明演説で北朝鮮情勢などを挙げ、「外交と安全保障の国家戦略を、政治の強力なリーダーシップにより、迅速に決定できるよう、官邸における司令塔機能を再編、強化」すると主張しました。首相と三閣僚による審議の枠組みを設けたのも、首相の権限を強化し、「迅速」に意思決定するためです。
首相は、「世界とアジアのための日米同盟」を目指すために、「総理官邸とホワイトハウスが常に意思疎通できる枠組み」を整えると述べています。日本版NSCがホワイトハウスとの窓口になるとの見方もあります。
アーミテージ元米国務副長官らが二月に公表した「第二次アーミテージ報告」でも、日米同盟強化のために「最も効果的な意思決定のため、日本は国家安全保障の制度の強化を続けるべきだ」と提言しています。
一方、官邸機能強化を推進する側からは、「首相補佐官の役割や権限が明確ではない」「事務方の原案を了承するだけの安全保障会議との違いを出せるのか」「『情報請求権』を設けても、本当に各省庁から情報が集まるのか」など、日本版NSCの“実効性”に疑問が出されています。
「官邸機能強化会議」の最終報告(二月)は、NSCの命ともいえる情報を握る上で「秘密保護」の重要性を強調し、「可及的速やかに、情報の提供を受けたものを含め、これを漏洩(ろうえい)したものに対しては厳しい処罰を定めた法律を作ることが必要」だと指摘しています。
三日の自民党総務会では政府の情報管理をめぐって批判が相次ぎ、「秘密保護法制」を来年通常国会までに提出することで法案が了承されました。小池百合子首相補佐官(国家安全保障担当)は、「日本は情報が漏れやすく、米国から必要な情報が提供されていない可能性がある」と述べています。
「秘密保護」の対象がどこまで及ぶか定かでなく、政府による情報統制が強まる危険があります。
米国のNSCについても、さまざまな問題点が指摘されています。ブッシュ米政権のNSCは、「イラクは大量破壊兵器を保有している」という虚偽の情報を前提にイラク戦争を審議し、大統領の暴走を助長しました。
構成閣僚や事務局スタッフを少人数に絞った「日本型NSC」でも、少数の人間が都合のいい情報をもとに外交・軍事政策を審議しかねない危険性があります。(竹下岳)