今日は、 【日経ビジネスオンライン】 の記事を御紹介。 (S)
日経新聞本体は、TPP推進の立場だとは思うが、【日経ビジネスオンライン】 常連執筆者の
三橋貴明氏による 題して 【TPP亡国論】 である。
念のため、筆者の三橋 貴明氏は、民主的・革新的立場では無く、
2010年の参議院選挙では自民党比例区で立候補して落選という経歴の持ち主である。
このコラムも、主として民主党政権の無能さを暴露する視点で書かれているのだが・・・
三橋 貴明(みつはし・たかあき)プロフィール
作家、経済評論家、中小企業診断士
1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業ノーテルをはじめNEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立、三橋貴明診断士事務所を設立した。現在は、経済評論家、作家としても活躍中。
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日経ビジネスオンライン 2011年2月7日(月)
【三橋貴明のTPP亡国論】
「平成の開国」意味分かって言ってる?
(前略)
民主党政権はTPPにより、「環太平洋諸国」に対して「関税自主権の放棄」を実施するわけだ。
菅内閣が推進するTPPは、中国人に対する治外法権と合わせ、まさしく
「平成の開国」以外の何物でもない。
日本は江戸末期同様に、外国人の治外法権を認め、関税自主権を喪失した国に落ちぶれるわけである。
さて、菅首相は1月24日の施政方針演説において、TPPを「平成の開国」と位置づけ、国会における議論を呼びかけた。
さらに、首相は1月29日、世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)において、日本のTPP交渉参加に関する結論を、6月までに出すと断言したのだ。
日本が早急にTPPを検討することが、事実上「国際公約化」されてしまったわけである。
(中略)
このTPPは、日本ではあたかも「農業問題」のようなとらえられ方をしている。だが、これは明確な間違いだ。
何しろ、TPPとは、
「2015年までに農産物、工業製品、サービスなど、すべての商品について、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」
という、「過激」と表現しても構わないほどに極端な「貿易・サービスの自由化」なのである。
通常のFTAであれば、製品種別や自由化を達成するまでの期間について「条件交渉」が行われる。ところが、TPPの場合はそれがないのだ。
何しろ「2015年」までに、「例外なしに」関税や各種の貿易障壁を撤廃しなければならないのである。
ちなみに、上記の「サービスなど、すべての商品」の中には、金融・投資サービスや法律サービス、医療サービス、さらには「政府の調達」までもが含まれている。
農産物の関税撤廃など、それこそTPPの対象商品の一部に過ぎない。
この種の情報が日本国民には全く知らされず、「平成の開国!」「バスに乗り遅れるな!」など、キャッチフレーズ先行、スローガン先行で話が進んでいる現状に、筆者は大変な危惧を覚える。
何しろ、TPPに日本が加盟することで、リーマン・ショックを引き起こした「あの」アメリカの金融サービス、
あるいは同国を訴訟社会化した「あの」法律サービスを、我が国は受け入れなければならないのである。GDPシェアが日米両国で9割を超える
(中略)
いずれにせよ、農業問題はTPPにより「自由化」される産業の、ごくごく一部に過ぎないのである。
それにも関わらず、政治家やマスコミの論説において、農業を「悪者化」「抵抗勢力化」し、TPPを「農業の構造改革問題」であるかのごとく印象付ける行為、すなわち「TPP問題の矮小化」が盛んに行われている。
さらには、日本がTPPに参加しなければ「世界の孤児になる」などと発言する人がいるわけであるから、驚愕すらさせられる。何しろ、TPPは世界でも何でもないのだ。
TPPとは、「アメリカ」なのである。

(上のグラフをクリックで別ウインドゥ表示)
TPPに参加している国々、及び参加を検討している国々のGDPを比較すると、アメリカ1国で66.7%を占める。さらに、日本のGDPの割合が23.7%である。
何と日米両国で、TPP諸国のGDP合計の90.4%を占めるわけだ。
現実には、TPPとは「過激な日米FTA」に過ぎない。
通常のFTAであれば、締結する両国が製品やサービスの種別、それに自由化(関税撤廃など)までの期間について、互いの国益に基づき条件を詰めるプロセスを踏むものである。ところが、TPPにはそれがない。
また、TPP推進派の中には、
「TPPに参加することで、アジアの活力を取り込む」
などと意味不明なことを言う人も多い。
図1-1の通り、TPPに参加、あるいは参加を検討している「アジアの国々」とは、日本を除くと
シンガポール、マレーシア、ベトナム、そしてブルネイしかない。
この4カ国のGDPを合計しても、わずかに4825億ドルに過ぎないのだ。
TPP諸国のGDP全体に占める割合は、2.4%だ(注:ケタを間違っているわけではない)。
TPPは「世界」でもなければ、「アジア」でもないのである。
例えば、中国や韓国もTPPに参加するというのであれば、まだしも理解できる。
しかし、韓国はTPPではなく、締結に際し条件交渉が可能な米韓FTAという道を選んだ。
そして、中国に至っては、TPPなど「完全に無視」しているのが現状である。
(中略)
やたら問題視される農産品に関しても、
日本の自給率は生産額ベースで70%(2009年。以下同)、
カロリーベースでは40%に過ぎない。
それに対し、アメリカの生産額ベース自給率は124%である。
自給率が低いということは、それだけ「海外から農産物を輸入をしている」ことを意味しているわけだ。
さらに、重量ベースで見た日本の主要穀物自給率は58%、
穀物自給率に至っては、わずかに26%に過ぎないのだ。
穀物という、極めて重要な農産物に限ると、日本は重量ベースで7割以上を「輸入」に頼っているのである。
この状況で「日本の農業市場は閉ざされている」などと言い張る人は、「数字」の読み方が分からないと断言されても仕方がないと考える。
日本の農業市場は、むしろ充分以上に「開国」されているというのが真実だ。
(中略)
現実の世界は、民主党首脳部や国内マスコミが思い描いているようなユートピアでも何でもない。各国が自国の国益を貫くために、様々な手段を駆使してくるのが当たり前なのである。その状況で「我が国は開国していない」などと首相自ら表明した日には、「どうぞ諸外国の皆さん。我が国から譲歩を引き出して下さい」と宣言しているようなものだ。
(以下略)
【三橋貴明のTPP亡国論】 2011年2月7日(月)
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